複素数の回転について:加法定理による証明

こんにちは。相城です。複素数の性質の中での拡大縮小回転の証明(補足)について書いておきます。高2で習う加法定理を用いますので以下の定理をご確認ください。

加法定理
\sin(\alpha\pm\beta)=\sin\alpha\cos\beta\pm\sin\beta\cos\alpha
\cos(\alpha\pm\beta)=\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta

2つの複素数の積

2つの複素数を以下のようにおきます。
z_1=r_1(\cos\alpha+i\sin\alpha)
z_2=r_2(\cos\beta+i\sin\beta)
このとき, z_1z_2をかけることを考えると, 2つの複素数の積は,
\begin{array}{lll}&&z_1\cdot z_2\\&=& r_1 r_2 (\cos\alpha+i\sin\alpha)(\cos\beta+i\sin\beta)} \\&=& r_1 r_2(\cos\alpha\cos\beta+i\sin\beta\cos\alpha+i\sin\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta)} \\&=& r_1 r_2\left\{\cos\alpha\cos\beta-\sin\alpha\sin\beta+i(\sin\alpha\cos\beta+\sin\beta\cos\alpha)\right\}\cdots(\text{A}) \\&=& r_1 r_2\left\{\cos(\alpha+\beta)+i\sin(\alpha+\beta)\right\}\cdots(\text{B})\end{array}
となり, 元の偏角\alpha\alpha+\beta\beta増えていることが確認できます。また大きさr_1r_2倍されていることが確認できます。すなわち, 2つの複素数の積は反時計回りに\beta回転させ, 大きさをr_2倍にする(拡大)ことを意味します。(A)⇒(B)に加法定理を用いています。

2つの複素数の商

今度は, z_1z_2で割ることを考えると, 2つの複素数の商は,
\begin{array}{lll}&&\dfrac{z_1}{z_2}\\&=&\dfrac{r_1(\cos\alpha+i\sin\alpha)}{r_2(\cos\beta+i\sin\beta)} \\&=&\dfrac{r_1}{r_2}\cdot\dfrac{(\cos\alpha+i\sin\alpha)(\cos\beta-i\sin\beta)}{(\cos\beta+i\sin\beta)(\cos\beta-i\sin\beta)} \\&=&\dfrac{r_1}{r_2}\cdot\dfrac{(\cos\alpha\cos\beta-i\sin\beta\cos\alpha+i\sin\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta)}{\cos^2\beta+\sin^2\beta} \\&=&\dfrac{r_1}{r_2}\left\{\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta+i(\sin\alpha\cos\beta-\sin\beta\cos\alpha)\right\}\cdots(\text{C}) \\&=&\dfrac{r_1}{r_2}\left\{\cos(\alpha-\beta)+i\sin(\alpha-\beta)\right\}\cdots(\text{D})\end{array}
となり, 元の偏角\alpha\alpha-\beta\beta減っていることが確認できます。また大きさr_1\displaystyle \frac{1}{r_2}倍されていることが確認できます。すなわち, 2つの複素数の商は時計回りに\beta回転させ, 大きさを\displaystyle \frac{1}{r_2}倍にすることを意味(縮小)します。(C)⇒(D)に加法定理を用いています。

それでは。

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