高校数学:部分分数分解の分け方のパターン

こんにちは。高2の数列, 高3の積分などで活躍すると思われる部分分数分解。その分け方のパターンを見ていこうと思います。出てくる形は大体これというものを書いておきます。以下, 2パターンを紹介しておきます。

部分分数分解パターン1

部分分数分解の方法として, 例えば,
\dfrac{mx+n}{(ax+b)(cx+d)}を部分分数に分ける場合,
\dfrac{mx+n}{(ax+b)(cx+d)}=\dfrac{A}{ax+b}+\dfrac{B}{cx+d}
とおいて, 右辺を通分し, 分子の係数比較を行うことで, 連立方程式ができ, それを解くことで, 定数A, Bの値が求まり, 部分分数分解を実現できる仕組みになります。この他に, 分母をはらって恒等的な関係を用いる数値代入法で, 定数A, Bの値が求まります。考え方自体は恒等式の攻め方と同じです。
【例】部分分数に分解すると, \dfrac{2x-1}{(2x-3)(3x-5)}=\dfrac{a}{2x-3}+\dfrac{b}{3x-5}となる。定数a, bの値を求めよ。
【解法1】係数比較
右辺を通分すると,
\dfrac{a(3x-5)+b(2x-3)}{(2x-3)(3x-5)}=\dfrac{(3a+2b)x+(-5a-3b)}{(2x-3)(3x-5)}
これが左辺と等しいので,
3a+b=2, -5a-3b=-1となり, これを解くと, a=-4, b=7
※通分でなくとも, 両辺に(2x-3)(3x-5)をかけて行ってもよい。
【解法2】数値代入法
与式の両辺に(2x-3)(3x-5)をかけて,
2x-1=a(3x-5)+b(2x-3)
x=0とすると, -5a-3b=-1
x=1とすると, -2a-b=1
これを解くと, a=-4, b=7

部分分数分解パターン2

\dfrac{mx+n}{(x+a)(x+b)^2}を部分分数に分ける場合,
\dfrac{A}{x+a}+\dfrac{B}{x+b}+\dfrac{C}{(x+b)^2}として, 分子の係数比較を行い, 連立方程式などで, 定数A, B, Cの値を決めるといいでしょう。これも先と同様に, 分母をはらって恒等的な関係を用いる数値代入法で, 定数A, B, Cが求まります。考え方自体は恒等式の攻め方と同じです。
【例】部分分数分解すると, \dfrac{x+2}{x(x+1)^2}=\dfrac{a}{x}+\dfrac{b}{x+1}+\dfrac{c}{(x+1)^2}となる。定数a, b, cの値を求めよ。
【解法1】係数比較
右辺を通分すると,
\dfrac{a(x+1)^2+bx(x+1)+cx}{x(x+1)^2}=\dfrac{(a+b)x^2+(2a+b+c)x+a}{x(x+1)^2}
これが左辺と等しいので, x+2=(a+b)x^2+(2a+b+c)x+a
これより, a+b=0, 2a+b+c=1, a=2となる。これを解いて, a=2, b=-2, c=-1となる。
※通分でなくとも, 両辺にx(x+1)^2をかけて行ってもよい。
【解法2】数値代入法
両辺にx(x+1)^2をかけて,
a(x+1)^2+bx(x+1)+cx=x+2
x=0のとき, a=2\cdots\maru1
x=1のとき, 4a+2b+c=3\cdots\maru2
x=-1のとき, -c=1\cdots\maru3
\maru3から, c=-1これと\maru1を, \maru2に代入し,
8+2b-1=3から, b=-2
以上より, a=2, b=-2, c=-1

分子は分母より低次数でもうまくいかない

部分分数のつくり方は
\dfrac{C(x)}{A(x)B(x)}=\dfrac{D(x)}{A(x)}+\dfrac{E(x)}{B(x)}
D(x)A(x)より低次数。E(x)B(x)より低次数と設定するのが一般的であると思われそうだが, D(x)E(x)をそのやり方で設定してもうまくいかない場合がある。つまり, E(x)D(x)の作り方を知らないと無限ループに落ちいることになる。

このルールにしたがって, 上のパターン2の解法で, 部分分数をつくるとき, 次のように設定するとする。
\dfrac{x+2}{x(x+1)^2}=\dfrac{a}{x}+\dfrac{b}{x+1}+\dfrac{cx+d}{(x+1)^2}
このとき, 【解法1】の係数比較の解法では, 未知数の文字が4つ( a, b, c, d )あるのに, 方程式が3つしか作れず,手詰まりとなる。しかし, 数値代入法を取り入れることで, 方程式は4つ以上作れるので, 問題なく答えられと考えるが, 無限ループにはまる。実際にやってみると, 次のようだ。
\begin{array}{lll}\dfrac{x+2}{x(x+1)^2}&=&\dfrac{a(x+1)^2+bx(x+1)+x(cx+d)}{x(x+1)^2}\\&=&\dfrac{(a+b+c)x^2+(2a+b+d)x+a}{x(x+1)^2}\end{array}
分子の係数比較より, a+b+c=0\cdots\maru1, 2a+b+d=1\cdots\maru2, a=2\cdots\maru3,
また, 分子だけの等式, x+2=(a+b+c)x^2+(2a+b+d)x+aに, x=1を代入すると,
4a+2b+c+d=3\cdots\maru4となり,
\maru3\maru1, \maru2, \maru4に代入すると,
b+c=-2\cdots\maru1', b+d=-3\cdots\maru2', 2b+c+d=-5\cdots\maru4'
\maru4'-\maru1'より得られる式は, b+d=-3となり, これは\maru2'と同じである。
この後いくらやっても同じことになる。初めから数値代入法でやっても同じである。

したがって, ある程度部分分数の構成を知っておかないと, ドツボにはまることになる。
例えば, \dfrac{mx+n}{(ax+b)^2}\dfrac{A}{ax+b}+\dfrac{B}{(ax+b)^2}と分解する。しかし, この分解においても, \dfrac{A}{ax+b}+\dfrac{Bx+C}{(ax+b)^2}としてしまうと, 今示したような無限ループにはまる。そもそも前途したパターン2の解法で, 分子をcx+dとしたことや, 今のように分子をBx+Cとしてなぜいけないのか。以下に示しました。

そもそもBx+Cとおけない

そもそも間違いなのは, \dfrac{mx+n}{(ax+b)^2}の式の部分数分解で, 分子をcx+dBx+Cというようにおけないのである。理由は具体例を挙げると,
\dfrac{3x+5}{(x+2)^2}を部分分数分解するとき, 次のように行うからである。
\begin{array}{lll}\dfrac{3x+5}{(x+2)^2}&=&\dfrac{3(x+2)-1}{(x+2)^2}\\&=&\dfrac{3\cancel{(x+2)}}{(x+2)\cancel{^2}}-\dfrac{1}{(x+2)^2}\\&=&\dfrac{3}{x+2}-\dfrac{1}{(x+2)^2}\end{array}
このように, 分子は必ず定数になるからである。
文字でやってみると,
\begin{array}{lll}\dfrac{mx+n}{(ax+b)^2}&=&\dfrac{\frac{m}{a}(ax+b)-\frac{bm}{a}+n}{(ax+b)^2}\\&=&\dfrac{\frac{m}{a}\cancel{(ax+b)}}{(ax+b)\cancel{^2}}+\dfrac{-\frac{bm}{a}+n}{(ax+b)^2}\\&=&\dfrac{\frac{m}{a}}{ax+b}+\dfrac{-\frac{bm}{a}+n}{(ax+b)^2}\end{array}
やはり, 分子にxを含む項は現れない。
だから, この場合の部分分数分解で, 分子をcx+dなどとおくことは失敗の原因になる。特に分母が因数分解できるときは気をつけた方がいい。

一般的に分母のax+bcx+dxの係数a, cは1であることが多いので, それで以下に部分分数分解のパターンを書いておく。これらの構成は知っておかないと, 先のようにドツボにはまる。

部分分数分解の有名パターン

部分分数分解の有名パターン

\maru1 \dfrac{mx+n}{(x+a)(x+b)}=\dfrac{A}{x+a}+\dfrac{B}{x+b}
\maru2 \dfrac{mx+n}{(x+a)^2}=\dfrac{A}{x+a}+\dfrac{B}{(x+a)^2}
\maru3 \dfrac{\ell x^2+mx+n}{(x+a)(x+b)^2}=\dfrac{A}{x+a}+\dfrac{B}{x+b}+\dfrac{C}{(x+b)^2}
\maru4 \dfrac{\ell x^2+mx+n}{(x+a)(x^2+bx+c)}=\dfrac{A}{x+a}+\dfrac{Bx+C}{x^2+bx+c}
\maru5 \dfrac{\ell x^2+mx+n}{(x+a)(x+b)(x+c)}=\dfrac{A}{x+a}+\dfrac{B}{x+b}+\dfrac{C}{x+c}

分子が1の場合の公式はこちらにまとめました。

高校数学:分子が1の部分分数分解の求め方

部分分数分解を行うために

部分分数分解

\maru1 分解した分数式の分子の定数を決める方法として, 係数比較と数値代入法がある。
\maru2 係数比較が面倒なときは, 数値代入法を使っていくとよい。
\maru3 分解した分数式を\dfrac{g(x)}{f(x)}とすると, g(x)f(x)より低次数で, 一般的にはf(x)より次数を1つ下げるが, それでうまくいくとは限らない。きちんと部分分数分解の式の構成を把握しておくことが大事。

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