高校数学:数III積分・定積分と不等式

こんにちは。今回は定積分と不等式について書いておきます。

定積分と不等式

定積分の比較として次の関係が成り立ちます。

定積分の比較

f(x)\geqq g(x) (a\leqq x\leqq b)ならば,
\displaystyle\int^b_a f(x)\,dx\geqq\displaystyle\int^b_a g(x)\,dx
等号が成り立つのは, f(x)=g(x) (a\leqq x\leqq b)のときのみ

問題を見てみよう

【例】nは3以上の自然数とする。
(1) 0\leqq x\leqq 1のとき, \dfrac{1}{1+x^2}\leqq\dfrac{1}{1+x^n}\leqq1を証明せよ。
(2) \dfrac{\pi}{4}<\displaystyle\int^1_0\dfrac{dx}{1+x^n}<1を証明せよ。

【解答例】
(1) 0\leqq x\leqq 1で, nは3以上の自然数であることから,
0\leqq x^n\leqq x^2が成り立つ。この辺々に1を加えると,
1\leqq 1+x^n\leqq 1+x^2となり, この逆数をとると,
\dfrac{1}{1+x^2}\leqq \dfrac{1}{1+x^n}\leqq1
となる。(証明終)
(2) (1)の等号は常には成り立たないので, 辺々を区間0\leqq x\leqq1で積分すると,
\displaystyle\int^1_0\dfrac{1}{1+x^2}\,dx<\displaystyle\int^1_0 \dfrac{1}{1+x^n}\,dx<\displaystyle\int^1_0\,dx
となり,
\displaystyle\int^1_0\,dx=1
また,
\displaystyle\int^1_0\dfrac{1}{1+x^2}\,dxで, x=\tan\thetaとおくと,
\begin{array}{lllll}x&:&0&\to&1\\\theta&:&0&\to&\dfrac{\pi}{4}\end{array}
で, dx=\dfrac{1}{\cos^2\theta}d\thetaであるから,
\begin{array}{lll}\displaystyle\int^1_0\dfrac{1}{1+x^2}\,dx&=&\displaystyle\int^{\frac{\pi}{4}}_0\dfrac{1}{1+\tan^2\theta}\cdot\dfrac{1}{\cos^2\theta}d\theta\\&=&\displaystyle\int^{\frac{\pi}{4}}_0\dfrac{1}{\dfrac{1}{\cos^2\theta}}\cdot\dfrac{1}{\cos^2\theta}d\theta\\&=&\displaystyle\int^{\frac{\pi}{4}}_0\,d\theta\\&=&\dfrac{\pi}{4}\end{array}
以上から,
\dfrac{\pi}{4}<\displaystyle\int^1_0 \dfrac{dx}{1+x^n}<1
が成り立つ。(証明終)

等号は常には成り立たないとは

よく質問に挙がる「等号は常には成り立たないので」という意味は,
f(x)\geqq g(x)で, 区間a\leqq x\leqq bにおいて, 少しでもf(x)>g(x)となる区間があれば, 区間a\leqq x\leqq bf(x)g(x)を積分した(面積を求めた)場合, 計算結果は必ずf(x)の方(f(x)の面積)が大きくなります。ですから, 積分計算時に等号がはずれるのです。

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